神戸大学・中国地質大学合同崗日嘎布山群学術登山隊は11月27日、無事に帰国いたしました。全てが未踏峰であったカンリガルポ山群の6000m峰の一つ、KG-2 (6805m)に世界に先駆けて初登頂するという快挙を達成することができました。この成功はご支援いただいた皆様方の力の結集によるものと隊員一同心より感謝いたします。
11月27日、関西空港に到着するとテレビ局の取材があり、また、11月30日の神戸大学・学長、福田秀樹先生への報告の折も報道陣の取材を受け、各新聞と地元のテレビニュ-スで報道されました。また、12月5日には東京、高輪プリンスホテルにて日本山岳会の晩餐会が皇太子殿下のご出席を頂いて開催されますが、そのイベントの一つとして今年の海外登山の報告があります。そこでこの初登頂の報告もさせていただきます。
カンリガルポ山群は20世紀初頭に欧米の探検家やプラントハンタ-によってその存在が知られるようになりましたが、中印国境に近いため永く外国人の入域が認められずに今日に至っております。神戸大学は2002年からこの地域の処女峰登山を試みてきました。2003年には若尼峰(Ruoni 6882m;山脈の最高峰)の登頂を試みましたが悪天候とル-トの極めて危険な状況から登頂断念しておりました。
この度合同登山を実施した相手の中国地質大学とは1988年に四川省の雀児山に合同で登山隊を派遣、見事に初登頂に成功しました。当時の隊員であった董範 Dong Fan教授がこのたびの中国隊の隊長で、お互いに気心の知れた仲間であり、両校の学生が隊員で、申し分のないチ-ムワ-クで未知の山に挑みました。この登山を通じて若い世代への伝統伝達とより親密な関係構築がこれからの日中友好、登山のみならず学問の分野での両校の協力体制の発展に繋がると思います。
また、中国地質大学のメンバ-には2人のチベット人学生(徳慶欧珠(Deqing Ouzhu)、次仁旦塔(Ciren Danda))が参加しましたが、見事に二人が初登頂いたしました。チベットの処女峰にチベットの若者が一番に登ったことは誠に賞賛すべきことと思います。彼等はチベット登山学校卒業後に中国地質大学に入学した強者達で8000m峰の登頂経験も持っています。将来は登山ガイドとして活躍する夢を持っています。チベットでの登山の発展はチベット観光の発展にも繋がります。彼らがそのような産業の発展に寄与する日は近いと思います。
彼らに続いて神戸大学側は矢崎雅則と近藤昂一郎が登頂しました。ヒマラヤの未踏峰に挑戦できる登山家がまた生まれたことも嬉しいことです。崗日嘎布山群や北の念青唐古拉山群(Nyainqentanglha Mountains)、そして四川省にまたがる横断山脈を含むヒマラヤの東には未踏の6000m峰が少なくとも300座は存在します。今回の登頂はこの地域の初登頂時代の幕開けといってもよいと思います。若い世代が次なる目標に向かって準備を進めてくれることを願っています。
学術調査では、竹田教授が新種のコウロギを発見するという成果をあげられました。大学らしい学術登山ができたことも喜ばしいことであります。
12月26日 10:00~12:00 農学部C101大教室にて報告会(一般公開)を実施いたします。世界初公開の美しい未踏峰の写真や登山隊の活動のビデオなどで登山隊の活動を報告いたします。是非ともご参加ください。なお、報告会の後は祝賀会(こちらは食事代4000円、事前に申し込み願います。E-mail: acku_office@acku.net ) を行います。隊員たちとご歓談いただければと思います。
報告会には中国地質大学から登山隊のメンバ-も多数参加の予定です。このような交流を通じて次の計画が実現することを祈念し、隊長の皆様へのお礼の言葉とさせていただきます。
Blogはこれにて終了させていただきます。KG-2登山情報は引き続き http://acku.net に掲載してゆきますのでそちらをご覧ください。 登山隊隊長 井上 達男